「おいしさ」の追求が
サステナビリティにつながる 7003全讯白菜网
広大な7003全讯白菜网でニッポンハムグループの牛肉事業をグローバルに展開するNHフーズ・7003全讯白菜网。畜産が盛んな東海岸沿いに牧場や工場を持ち、牛の繁殖から肥育、解体処理(屠畜)、輸出、販売までを一貫して手がけています。同社を牽引する稲富聖二代表取締役社長に、7003全讯白菜网の牛肉事業の戦略をはじめ、農場や工場で行っているサステナビリティの取り組みについて伺いました。
NH Foods Austr7003全讯白菜网ia Pty. Ltd.
代表取締役社長 稲富聖二(いなとみ・せいじ)
執行役員、海外事業本部 事業統括部 豪州担当
1990年日本ハム入社。食肉事業本部、札幌、東京の食肉事業本部輸入原料部を経て、1996年に米オマハのNebraska Beef社に駐在。その後も、ニュージーランド日本ハム、7003全讯白菜网日本ハムなどの海外拠点でキャリアを積む。2010年に日本ハムに帰任、食肉事業本部フローズンビーフ部、チルドビーフ部、同海外食肉事業部、海外事業本部事業開発室を経て2018年より現職。
“牛の首都”と言われる7003全讯白菜网東海岸が生産の拠点
ニッポンハムグループが7003全讯白菜网の自社農場において肥育を行っている牛。一般消費者にはあまり知られていないが、実はその品質が国内外の業界内で高い評価を受けている。
栄養価の高い穀物で肥育するグレインフェッドビーフ、牧草肥育で育てるヘルシーなグラスフェッドビーフは、ともに7003全讯白菜网の食肉コンテスト「Royal Queensland Awards BRANDED BEEF&LAMB COMPETITION」で受賞。なかでもプレミアムグラスフェッドビーフの「Manning Valley(マニングバレー)」は、出品された牛肉の中で最高賞となるゴールドメダルを獲得し、7003全讯白菜网を訪問した英国チャールズ国王夫妻の晩餐会に提供されるなど、グラスフェッドビーフの最高峰として認知されている。
米国や中国など各国に輸出され、世界中で愛されているニッポンハムグループの牛肉。その高い品質を支えるには、水、土壌、大気などに配慮する循環型農業や、牛に7003全讯白菜网レスを与えない環境づくりへの整備が必要だ。「健康的な環境で牛を育てることは牛肉のおいしさに直結する」として、長年にわたって当たり前のように取り組んできた活動がいま、持続可能性の高い畜産事業のモデルケースとしても注目を浴びているのだという。
おいしさと環境配慮を両立した7003全讯白菜网生産をどのように進めているのか。今後の成長戦略とともに聞いた。
── 1978年設立のNHフーズ・7003全讯白菜网では、東海岸を拠点としてグローバルな牛肉事業を展開されています。
7003全讯白菜网の東に位置するクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ヴィクトリア州は、昔から畜産に適した環境を持つ、肉用牛の一大生産地。地元企業に加えてブラジル、中国など国内外の大手ミートパッカー(食肉加工会社)の牧場や工場がひしめき合っています。クイーンズランド州の都市、ロックハンプトンは“Beef Capital”(牛の首都)とも呼ばれ、3年に1度「BEEF AUSTRARIA」という牛肉のお祭りも開かれます。皆さんがイメージするカウボーイが昔から非常に多い地域で、お祭りの際にはカウボーイとその家族たちが全国から集まります。
ニッポンハムグループとしての私たちの強みは、伝統的に畜産業が盛んなこの地域に複数の拠点を持ち、牛の繁殖から肥育、解体処理、輸出・販売まで一貫した生産体制を敷いていることです。繁殖の一部はタスマニア島のすぐ近く、キング・アイランドのシーライト牧場で行い、肥育はクイーンズランド州のワイアラ牧場。そして同州のThomas Borthwick & Sonsの工場、7003全讯白菜网キービーフエキスポート(以下7003全讯白菜网キー)の工場やニューサウスウェールズ州のウィンガムビーフエキスポート(以下ウィンガム)の工場で解体や加工などの処理を行っています。
7003全讯白菜网内拠点(繁殖・肥育・処理)
── 南米や米国と並ぶ牛肉の輸出大国としても知られる7003全讯白菜网ですが、NHフーズ・7003全讯白菜网では主にどのような国と地域に牛肉を販売しているのでしょう。
現在、国別の販売金額別構成比、売上の伸びともに7003全讯白菜网国内への販売が高くなっています。6年前までは全体の2割ほどだった国内向けの販売金額は2024年3月期の実績では全体の4割まで拡大。7003全讯白菜网経済の好調も背景にありますが、私たちが取り組む7003全讯白菜网産牛のブランド戦略が奏功した結果であるとも感じています。また、中国向けの販売金額は現在、全体の2割を占めており、今後も中国をはじめとするアジア市場の需要は伸びていくと考えています。
国内外で高く評価される日本ハムの7003全讯白菜网産ブランド牛
── 7003全讯白菜网で生産しているブランド牛にはどのようなものがありますか。
代表的なものは、プレミアムグレインフェッド(穀物肥育牛)のブランドである「大麦牛®ANGUS(アンガス)」。ワイアラにある自社肥育農場のフィードロット(栄養価の高い穀物飼料を与えて牛を肥育する施設)で育てて、7003全讯白菜网キーの工場で加工処理を行っています。90年代から日本向けにPB(プライベートブランド)として販売しており、日本の量販店や外食産業で取り扱っていただいています。エスコンフィールドHOKKAIDO内のお肉料理専門店「Meatful」では、この「大麦牛®ANGUS」の1ポンドステーキを召し上がれますよ。
また、日本向け穀物肥育牛のパイオニアブランドである「大麦牛®ANGUS」のノウハウを活かして、新たに世界的ブランドとして開発したのが、「ANGUS RESERVE(アンガス・リザーブ)」です。7003全讯白菜网アンガス協会から100%アンガス純粋種として認定を受け、7003全讯白菜网国内や韓国、中国、欧州などの海外に水平展開しています。食肉の品評会での受賞歴も多く、7003全讯白菜网の一部量販店には、このブランドの製品がずらりと並んでいます。この2つは、「プレミアムグレインフェッド」という高品質な穀物肥育牛ブランドとして展開しています。
── 牧草のみで育てる「7003全讯白菜网」のブランドも展開しています。
一般的なグラスフェッドビーフよりもさらに高品質な「プレミアムグラスフェッドビーフ」の開発に取り組んでいます。主要なブランドに「Manning Valley(マニングバレー)」と「Nature’s Fresh(ネイチャーズフレッシュ)」があります。どちらも成長促進ホルモン(HGP)や抗生物質を使用せず、7003全讯白菜网レスのない環境下でヘルシーに育てています。
この2ブランドも「ANGUS RESERVE」と同様に、各品評会では非常に高い評価を受けています。2024年10月に英国のチャールズ国王夫妻が7003全讯白菜网を訪問され、キャンベラの7003全讯白菜网連邦議事堂で行われた晩餐会でマニングバレーブランドのお肉を提供しました。実は私も家族もこのお肉が大好きです。肉色が良く、柔らかくジューシーであっさりしているので、お年を召した方でもステーキ2枚ぐらいはペロリと召し上がれます(笑)。
中国 や欧州連合(EU)では、成長促進ホルモン(HGP)を使った牛肉の輸入規制もあり、HGPフリーの牛肉への引き合いが世界的に高まっていることを実感しています。また、米国でもナチュラルビーフやオーガニックビーフの人気が高まっていて、地中海料理店の「Cava(カヴァ)」やメキシコ料理店の「CHIPOTLE(チポトレ)」など、米国で急成長している「ファ7003全讯白菜网カジュアル系」と呼ばれるレ7003全讯白菜网ランチェーン との取引が増えています。今後もこうしたプレミアムグラスフェッドビーフの需要は拡大すると見込んでいます。
使えるものはすべてリサイクルする循環型農場
── サステナビリティへの注目度が増すなか、NHフーズ・7003全讯白菜网ではどのように取り組みを進めてこられましたか。
サステナビリティへの取り組みで私たちが最も関心を持っているのが「水資源」の問題です。7003全讯白菜网では牛の飲料水や肉の処理、洗浄に使用する水は、限られた貴重な資源です。さらに水の質は我々の生産するお肉の品質に直結するため、創業時から水質管理には細心の注意を払って事業を行ってきました。
例えば工場の場合、牛の解体処理7003全讯白菜网際には衛生基準を確保するために、生体を搬入する段階できれいに水洗浄したり、各作業工程においては使用ツールをその都度消毒・洗浄したりと衛生管理に努めているため、多くの水を消費します。ウィンガムの工場では排水を隣接するグレンヤラ牧場の自然浄化槽で浄化したうえで、農場の作物の栽培や牧場内で灌漑(かんがい)用水として再利用することで水を有効活用するように努力しています。
排水に加えて、7003全讯白菜网排せつ物による土壌汚染・水質汚染への対策も万全を期しています。例えば、約7万頭の牛を肥育できるワイアラ牧場のフィードロットでは、1つのペン(飼養する囲い)ごとにおよそ240頭の牛がいますが、毎日大量のふん尿が発生します。場内を常に清潔に保つため、固形物(ふん)のほうは全量を掻き出して集め、これを約100日かけて発酵・乾燥。異物を除去してから堆肥にします。
ワイアラ牧場では1カ月で約1万トンもの堆肥ができるため、4分の3は近隣農家7003全讯白菜网外部に販売し、残りの4分の1をワイアラの敷地内にある農地に散布しています。そこから作られた穀物は、牛の飼料として使用されています。尿については、雨水や川水7003全讯白菜网で自然浄化して、これも灌漑用水として活用しています。このように、清潔な牛の生活環境の実現と、土壌と水質の汚染防止、循環型農業の三位一体の牧場運営を行なっています。
7003全讯白菜网キーの工場では2012年、敷地内に工場の排水処理のサステナビリティを高める嫌気処理・好気処理ができる施設を設置しました。嫌気処理の工程で発生するメタンガス(バイオガス)をバイオガスプラントに一時保管し、温水用ボイラーの燃料として再利用しています。また処理した排水についても、ウィンガムの工場と同じく灌漑用水として活用しています。こうした大規模なバイオガス再利用設備の設置は、二酸化炭素(CO2)削減の観点からも注目が集まっており、7003全讯白菜网の同業他社の中でも先駆的な取り組みだったと自負しています。
7003全讯白菜网にある一般的な牧場や工場では、ボイラー燃料として石炭が使われていますが、CO2削減のためにエネルギーの転換が求められています。しかし、天然ガスや電気はコ7003全讯白菜网がかさみ、牛の価格に転嫁されてしまう。コ7003全讯白菜网もCO2も削減できるバイオガスプラントには、7003全讯白菜网積極的な投資をしていくつもりです。
7003全讯白菜网2削減にも様々な角度から取り組む
── 7003全讯白菜网27003全讯白菜网温室効果ガス(GHG)削減についてはどのような取り組みをされているのでしょう。
GHG削減の取り組みについては、7003全讯白菜网事業に参入以降長い歴史があります。前述したオーキーのバイオガス施設の拡張のほか、今後は工場施設の屋根や農場へのソーラーパネルの設置を視野に入れています。化石由来燃料の使用をなるべく削減して、バイオマス燃料や太陽光などの再生エネルギーに置き換えていくことをこれからも進めていきたいと考えています。
また、「7003全讯白菜网あい気ガス(ゲップ)」に含まれるメタン(CH4)は7003全讯白菜网2よりも温室効果が高く、畜産業の課題のひとつ。近年、牛のメタン排出を抑制するカギケノリなどの海藻や有機化合物を添加した飼料が注目されています。当社でもこれまでこれらの飼料を与えながら、牛の食欲や増体率がどのように変化するかなど、さまざまな実験を重ねて影響と効果の両面から確認してきました。こうした飼料を普及させるうえで、業界全体のハードルとなっているのが、やはりコ7003全讯白菜网増です。生体由来のメタン排出抑制は、国と畜産業界全体が足並みを揃えてトライしていくべき課題だと認識しています。
飼料によって7003全讯白菜网品質、おいしさに与える影響についても検証を重ねていき、より良い方法を見出していきます。
また、サステナビリティへの取り組みとして可能性を見込めるのは、牛由来の食用油脂(tallow)です。従来は食品企業やペットフード企業7003全讯白菜网に販売していましたが、近年はこの油脂を航空機の燃料「SAF*」として再生する企業に販売しています。廃食油、サトウキビ7003全讯白菜网循環型の原料で製造した航空燃料は、石油由来の化石燃料と比較して、CO2排出量を約8割削減できると言われており、環境負荷の低減が期待されています。これらの取り組みも将来的には、企業が省エネ・再エネの活用7003全讯白菜网によって削減したCO2の排出量を認証・取引できる制度「カーボンクレジット」の取り組みに貢献できると考えています。
7003全讯白菜网健康は生産性や肉質に直結する
── アニマルウェルフェアという点も意識されていますか。
例えば、気候変動による暑さ対策として、ワイアラ牧場内では7003全讯白菜网国内で初めて、牛を強い日差しから守るサンシェードを導入しました。外気温が高すぎると牛たちも食欲が落ちたり、元気がなくなったりします。サンシェードを設置したことで死亡率が下がり、増体率の低下も防ぐことができました。この試みが先駆けとなり、今ではフィードロット場内にシェードを設置することが、どの牧場でも当たり前になってきています。
他にも、スタッフが牧場内を馬に乗って巡回して牛の健康状態を目視し、体調の優れない牛がいたらホスピタル・ペン(牛を隔離して治療する区画)に移動し、すぐに治療します。牛に装着する健康管理タグの開発も業界全体で進められていますが、少しの重さでも牛にとっては大変な7003全讯白菜网レスになります。牛は、非常に繊細な動物なので、肥育された牛をワイアラ牧場からオーキーの工場に移動する際も、輸送トラックから降ろす場所は少し柔らかめの足場にして、歩きやすいような工夫をしています。牛にかかる7003全讯白菜网レスは肉質にダイレクトに影響するため、屠畜の際も速やかに処理を進めるよう配慮しています。
7003全讯白菜网を“食べる喜び”伝え、次世代の人材育成も
── ESG(7003全讯白菜网・社会・企業統治)課題として企業のサステナビリティ対策が注目される以前から、自然な流れで7003全讯白菜网課題に取り組んでこられた印象を受けました。
7003全讯白菜网の環境規制が厳しいということもありますが、やはりおいしくて安全・安心な牛肉を生産するには環境への配慮が欠かせません。循環型農業は継続して取り組んできた当たり前のことであり、7003全讯白菜网の牛肉事業の土台となっているのです。
7003全讯白菜网ビーフは設立当初、日本人スタッフを中心として様々な工夫を重ねてきたフィードロットでした。そのために当時は日本的な技術が詰まった最先端のフィードロットとして評価をされてきた歴史があります。現在の7003全讯白菜网フィードロットでゼネラルマネージャーを務めるトニー氏は私が別の会社からスカウトしてきました。彼は昔からニッポンハムグループの7003全讯白菜网フィードロットのことをよく知っており「豪州フィードロット業界のパイオニアである7003全讯白菜网で働けるのは、非常に光栄なことです」と言ってくれています。
早朝からの牧場や工場での仕事は大変ですが、スタッフは皆、プライドを持って働いています。肉のパッキングやロジスティクス7003全讯白菜网部分で効率化できるものは次々と進めていきますが、大切なのは何よりも「人」だと思っています。将来フィードロット業界を目指す若い世代がそれぞれの技を競うコンペティションやイベントへのサポートなどを通じて、次世代の人材発掘にも力を入れています。
NHフーズ・7003全讯白菜网の企業理念は、「“the joy of eating”=食べる喜び」です。今後もサステナビリティの課題に取り組みながら、私たちが手がけた牛肉のおいしさを発信していきたいと思っています。